妻恋う鹿は笛に寄る

初夏の作品

ジャイアントカプリコ

f:id:ootasyoka:20230204063939j:image

遠足に行くときには、リュックにジャイアントカプリコを入れておきたかった。

子供心に夢のあるお菓子だと思っていた。あのかわいいフォルム。口溶け良いチョコ。包装を剥いでみると、ひとかけらも欠けてない完璧なお菓子。

このお菓子を作っているのは、お菓子の国からやってきた緻密な職人に違いない。そう疑ってやまなかった。かぷりとかぶりつきながらいつも幸せな気持ちになれた。だからこそ、遠足にも持っていきたかった。

ジャイアントとつきながらも、繊細な作りのお菓子が、リュックの中で揺られて傷つき、背中に当たる体温に融けて、見る影もない姿になっていることを想像すると、遠足に持っていくことはできなかった。

それは私の変わらない価値観がそうさせたのだと思う。

天国にお菓子を一つだけ持っていけるなら、ジャイアントカプリコを持っていきたい。いや、天国にはジャイアントカプリコは常備されているに違いない。私が天国の主なら、絶対に切らさずに、楽園の果物に紛れ込ませて、住人の手元に置いておくに違いない。

かる~いサクサク感は、幸福の象徴である。どんな楽園の果実よりも引けを取らない魅惑的なお菓子。

もし、過ちを犯して、地獄に落ちるとしても、ジャイアントカプリコを忘れずに持っていきたい。閻魔大王を買収するなら、金の延べ棒でもなく、価値のある美術品でもなく、ジャイアントカプリコである。閻魔大王の袖に下に潜り込んで、そっと潜ませれば、巡り巡って、この世に戻れると信じている。

大人になったら、子ども心なんてなくなると思っていたが、子どもっぽい大人になった。子どもの時にいろいろ我慢していた分、取り返そうとしてさえある。

何歳になっても子ども心を忘れない大人でありたいし、子どもが身近にいたとしたら、一緒にジャイアントカプリコを美味しそうにかじる、一人の人間でありたい。

話が大げさになってしまいました。
失礼。
とにかくジャイアントカプリコは偉大なのである。大人と子どもになんの境界線もないことを教えてくれる、貴重なお菓子なのです❣️