妻恋う鹿は笛に寄る

初夏の作品

約束の場所

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それは夢のよう
温度のない水の中で溺れている
金色の光は溢れ
どこまでも届かない指先

記憶の片隅に
あなたの面影 
どこかで出会ったことのある
安らかなほほ笑み

それはモノクロのよう
不思議な縁は細く繋がっている
見失うことは常で
それでも歩き続ける宿命

火影は闇に
あなたの息遣い 
静かに導かれてゆく
手当てされた傷口

それは波のよう
どこまでも揺れて波打っている
波長は重なって
認め合い許しあい

やがて私たちは一つになり
痛みが増えるごとに 
あなたを知る
光に影に

それはひとすじの光のよう
藍色の闇に落ちている
約束の場所を見つけ
目指しゆく二人