妻恋う鹿は笛に寄る

初夏の作品

2023-01-01から1年間の記事一覧

澄んだ闇

人間には闇があって、いい曇った闇と澄んだ闇とあって澄んだ闇がいい漆黒の闇の奥に星空が見える 人間には輝きがあって、いい曇った輝きと澄んだ輝きとあって曇った輝きがいい曇った輝きは人に優しい

妖精

菜の花の撮影をしていたら、花と花の間に小指の先ほどの人間の形をした妖精がいた。うっとりするようなかわいい女の子で、白いシルクでできた布のようなものを羽織っていて、僕の方を見ていた。僕は見てはいけないようなものを見てしまったような気がして、…

キーマカレー

車が走る音も聞こえない、猫の鈴の音も聞こえない、しんと静かな夜だった。今にも降り出しそうな雨を待ちながら、男は窓際でコーヒーを飲んでいた。眠れなかったのだ。目がらんらんとするのでもなく、ただ心が揺れて眠れなかったのだ。男には愛する女がいた…

世の中には格好良い奴もいる頭の良い奴もいるお金持ちの奴もいる要領よくやれる奴もいる運の良い奴もいる僕は・・・・と考える時いつもうつむいてしまうけれど僕の持っているもので精一杯やれるのはこの世で僕自身だけだと思っている誰も代わりはできないし…

群青色の闇があなたの底に向かって流れていく金糸雀色に光る三日月も一緒に落ちていく瑠璃色の地球が滅亡するかのごとくひゅごーひゅごーと音を立てて表面では渦を巻いている珊瑚朱色の唇を奪うと平手打ちされたが流れは止まった懲りずにもう一度奪うと静か…

お姫様と吟遊詩人

あるところに美しいお姫様がいました。人づきあいが苦手で、王様が近隣の名だたる名士を招いて舞踏会を開いても、なかなか出席しようとはせず、お姫様にひと目会いたい若い名士たちを、いつもがっかりさせていました。 森の入り口の林の荒屋に吟遊詩人が住ん…

子どものお遊びみたいに無邪気

そうやってあなたのすべてを諦めている感じが好きなののんびりと構えて、自堕落で、遊んでて・・・でもね、本当のところ諦めているように見えて、ちっとも諦めてないあなたのそういうところ、長い間付き合ってみないと分からないから人から誤解されがちだと…

雑貨&洋服のお店の店員を十年近くしているが、一人気になる男性客がいた。こういうとなんだが鬼のような怖い顔をしているが、いつも女性物の服を買って帰る。それもとびっきり上品で可愛いものを選ぶ。季節が変わる頃に、いつも一人でやってきて、店に入荷…

気持ち通じ合う

生きていて一番うれしいことは、気持ち通じ合う人と出会うことではないだろうか?それは同性かもしれない。異性かもしれない。同世代かもしれない。年の離れた人かもしれない。動物かもしれない。植物かもしれない。自然かもしれない。通い合う心と心で語り…

他の人に見えているものが見えなくなってしまった。変化に対応できずに戸惑ったままの孤立感。そういう状況はひどく寂しい。一つ分かっていることは、そういう時に身の回りの自然はとても優しいということだ。砂ぼこりを巻き上げるような強い風、花びらの上…

洞穴

人々が愉快に暮らせるような楽園型の人間にはなれないような気がする。面白いことを言える訳ではないし、人を楽しませたり、愉快な気持ちにさせられる人間ではない。どちらかというと、ひっそりとした洞穴型の人間かもしれない。果実もなく、明るい日差しが…

愛し方

第一の人格も、第二の人格も第三の人格も、第四の人格も第五の人格も、第六の人格もそれを司どっている無意識の私もそれぞれの愛し方で妻を見つめ、欲している中にはサイコの私も満たされ癒されている

雪見だいふく

座るときには、僕が右側、君が左側に座ることがいつの頃からか習慣になっている。それは、僕が右側にいる方が安心感持てるからっていう理由からだった。どうして?と聞くと、理由は分からない。ただ、安心できるのと言う。 君がそう言うのであれば、そうしよ…

敗者復活戦

いつでも敗者復活戦が本番で、ギリギリの闘いから、何かを学び、失うものは何もないと気づかされて、這い上がろうとしている毎日。

ファイト!

人間の事情か虫食いで切られてしまったのかもしれませんが、樹形に勢いがあって美しい樹。 どんなことあっても腐るなよ!ファイトって言ってもらえた気がしました。 いつも葉を茂らせたこの樹の下を潜って、高校に行ってたから、自分を見ているようで、懐か…

運命

寄り添うように 咲く順番を待っている 一対の蕾 運命を共にすることを誓い合った 二人に見えました

ジャイアントカプリコ

遠足に行くときには、リュックにジャイアントカプリコを入れておきたかった。 子供心に夢のあるお菓子だと思っていた。あのかわいいフォルム。口溶け良いチョコ。包装を剥いでみると、ひとかけらも欠けてない完璧なお菓子。 このお菓子を作っているのは、お…

余白に降る雨

雨降りの一日。優しさに優しさ、温もりに温もり、痛みに痛みを重ね合わせる日々。欠けていて不完全な私たちは、重なり合って、苦楽を共にしている。あなたの余白を愛している。余白に明かりを灯し、闇を分かち合っている。触れた手から伝わる体温に幸せを感…

永遠と引き換えに今を手に入れている

ダイイングメッセージ

目覚めると、古い影が貼り付いていた。付箋のようにペロリと簡単にはげそうに弱々しい。メッセージが書き込まれ、簡単に諦めるな!簡単に手放すな!と殴り書きされていた。それは過去の自分のダイイングメッセージで、破壊神を心に抱えてた彼からの意志のこ…

雨の情景Ⅰ

雨が降るから君に会いに行く 鈍色の雨の中を 群青色の傘をさして ゆるやかな坂道 電線の鳩 芽吹いた蓬 何年経っても 扉の前で高鳴る鼓動 襟を正して扉をノックする 君の部屋は透明な湖の底のように静かで 掛け時計の乾いた音 尾鰭を揺らす金魚 本棚の詩集 世…

約束の場所

それは夢のよう温度のない水の中で溺れている金色の光は溢れどこまでも届かない指先 記憶の片隅にあなたの面影 どこかで出会ったことのある安らかなほほ笑み それはモノクロのよう不思議な縁は細く繋がっている見失うことは常でそれでも歩き続ける宿命 火影…

誰のものでもない世界を僕らは生きている

荒い呼吸のまま転がっている焼けついた魂の慟哭 干からびた大地から水を吸い上げようともがく植物の祈りにも似た力 満たされない世界を僕らは生きている欠けているものを補い合う為に 孤独を背負ったまま歩いている錆びついた魂の血の味 群れることを捨てた…

想いが届く日

朝の光を浴びて今日一日が始まる 難しく考えることはない私にはきっとできるはず 困難なことも痛みもいつか退散する 種を蒔いていこう来たるべき日の為に 雨の日も晴れの日も恵みの一日になる 今日の想いが届く日がいつかやってくる

素敵なこと

言葉で伝えきれない 想いがあるなんて なんて素敵なことでしょう

世界は一つという大きな嘘

窓辺に寝転がって、ガラス玉に光を翳してみる。世界は一つという大きな嘘を信じたいがために、武器を捨てることにした私は、世界の片隅で詩を詠んでいる。 詩人は職業ではなくて、生き方であると言いたげに、できそこないの詩らしきものを詠んでは、紙飛行機…

プロローグ

渡り鳥が迷わず戻ってくるように 季節になると必ず花が咲くように それは自然なことだった